モスクワ在住の作曲家・英語教師のアントン・ブレジェストフスキーが1996年に結成したネオ・クラシック系アンサンブル。アントンの歌曲集『鏡』を演奏・録音するために音楽家達を集めたのが発端だった。1998年以降、トールキンの『指輪物語』やその他「妖精」研究者たちに触発された「妖精の音楽」をモスクワのクラブやレストランで演奏しはじめた。「妖精の音楽」は国内外で人気を集め、短期間のうちにTVやラジオ出演にまで至った。フランスのレーベルPRIKOSNOVENIEから発売されたCD『Elvenmusic』は、ロシア国内で売切れてしまったほどである。
アントンとCapriceの音楽はロシアの象徴派やイギリスの古典詩、トールキンの小説など、文学をモチーフにした歌曲、室内楽曲が中心である。『Elvenmusic』の後、ウィリアム・ブレイクの詩による『無垢と経験の歌』、妖精の音楽シリーズの第2弾『The Evening of Iluvatar's Children』が同じレーベルからリリースされている。
映画『KIEMET』の中には、彼らがまだ有名になる以前、モスクワのナイトクラブで演奏している様子が見られるほか、CD化されていない最近の作品も聴くことができる。スターリン時代の弾圧を生きた不遇の神秘主義的思想家ダニ−ル・アンドレーエフの詩に基づく四重奏曲、そしてテニスンやワーズワースの詩による小歌曲集『Sister Simplicity』がそれである。アンサンブルのメンバー全員がロシアでクラシックの専門教育を受けており、作曲者の意図をプロフェッショナルに具体化している。
ギタリスト、近藤秀秋によって1998年に結成された、東京の即興演奏家集団。グループの名前はExperimental Improvisors' Association of Japanの略。近藤の言葉によれば、バンドではなく、ミュージシャンのためのプールのようなものであるという。即興演奏の美学を追究する個性的なメンバーたちが、毎回違った顔合わせやコンセプトでライヴ・コンサートを続けている。また、メンバー達もそれぞれが独立してユニットを作って活動するなど、彼らの音楽活動は倦むことを知らない。
映画『KISMET』では、普段は即興を主体にしているこのグループのメンバ−が、作者の提案で3つの小曲を作曲しそれを録音・ライヴ演奏する様子が描かれている。『薄明の天使たち』というタイトルでCD化されたそれらの曲や、普段のライヴ演奏の記録から聴こえてくる彼らの音楽には、フリー・ジャズという言葉から連想されるアメリカ的なものよりも、むしろ日本的な繊細な叙情や間の美しさが感じられる。 クリップ(映画『KISMET』から「夢の縫子」) Real player
7年間、音楽スタジオの中でだけ創作し、その後ライヴ演奏をするようになってからも決して仮面の後ろの素顔を見せない、ロシアの伝説的な"ゴシック"バンド。リーダーのCountAshはあるインタヴューの中で、イギリスの"ゴシック"の元祖DEAD CAN DANCEからの影響を認めている。しかし、Moon Far Awayのユニークさは、ヨーロッパのゴシック・サブカルチャ−とロシアの伝統的な民族文化とを融合させている点にある。Ashはゴシック・サブカルチャーを、「ヨーロッパの神秘主義的音楽意識の名残」として捉えており、ロシア文化との融合も、北部ロシアにおけるロシア正教の特色を踏まえたものとなっている。Moon Far Awayのは西ヨーロッパでも高く評価されており、ドイツのコンピレーションに参加したり雑誌にインタヴューが掲載されたりと、ロシアのゴシックシーンの先駆者にして代表者としての名声を確立していると言える。
映画『KISMET』と短編『Ritual of White Night』には、彼らの根拠地アルハンゲリスクで2002年に行われたライヴ・コンサートの記録映像が使用されている他、リーダーAshが彼らの音楽の理念について語るインタヴューも聞くことができる。
クリップ(映画『Ritual of White Night』から「HYMM」)Windows Media
姫路を根拠地とする、日本の2人組。ヴォーカリストのChakoは、視覚的或いは聴覚的な印象に触発されて音符なしに作曲するという。彼女の歌は歌詞があるように聞こえるが、実はその歌詞は何語でもない。私生活でもパートナーであるMakotoにサポートされつつ、ある時は激しい情念を、ある時はそこはかとない懐かしさを、ある時は哀悼の悲しみを、聴く者に伝えるChakoの歌は、多分、世界中の誰にも理解されるだろう。まるで異世界から伝送されたかのような不思議な音楽世界を作り出しているChakoだが、彼女自身、しばしば霊の存在を感じることがあるといい、作業中もスタジオに集まってくる霊に励まされるような気がするという。。JACK OR JIVEは既に10年以上のキャリアを持ち、ヨーロッパでは数多くのCDがリリースされ、ロシアでもゴシック系の音楽として高く評価されているにもかかわらず、残念なことに日本では未だあまり知る人がいない。
映画『KISMET』の中では、2002年5月に東京のシアターΧで行われたライヴ・コンサートから「Nostalgia」と「Blood of tears」の2曲を聴くことができる。